【主宰者の歴史】音に魅入られた男の、40年におよぶ実験日誌
- マコト トミザワ
- 6月19日
- 読了時間: 5分
更新日:6月20日
こんにちは、MASTERSOUND Spatoal Lab(MSSL)主宰のトミーです。
私はこれまで40年以上、ずっと「音」と「コンピュータ」の可能性を追い続けてきました。
そして今、
私は
「あなたの耳は、まだ『後ろ』を知らない。」
というコンセプトを掲げ、人間の脳をバグらせるような立体音響(空間音声)技術の研究と動画制作に明け暮れています。
世間から見れば、私は「50代の新人クリエイター」に見えるかもしれません。
ですが、
このMSSLというプロジェクトは、決して急に思いついたものではありません
。
振り返れば、私の人生は10代の頃からずっと、時代を先取りしすぎては周囲に理解されず、それでものたうち回りながら音をハックし続けてきた「泥臭い実験」の連続でした。
今日は、私がなぜ今の空間音響テクノロジーに辿り着いたのか、その不格好で愛おしい、私自身の「思想の系譜」をお話しさせてください。
第1章:1980年代、少年と「四角い箱」の初期衝動
私のデジタル、そして音楽との出会いは1980年代、黎明期のマイコン
「MZ-2000」
を手にした時に遡ります。
まわりのパソコン少年たちがこぞってゲームを作ったり改造したりして遊ぶ中、私が圧倒的にのめり込んだのは、「BASIC言語を使って、パソコンに音楽を演奏させること」でした。
「なんでこの四角い箱から音が鳴るんだろう?」 その純粋な初期衝動が、私のすべての始まりでした。
その後、伝説のモンスターシンセサイザー
「シンクラビア」との出会いを経て、私の人生のベクトルは「プロの音響業界」へと完全に固定されることになります。

第2章:プロフェッショナル時代、音の限界との格闘
業界に入ってからの私は、常に時代ごとの最先端システムと並走してきました。
アナログからデジタルへの過渡期、
SSL ScreenSound &OmniMix を経て、
デジタル・オーディオ・ワークステーションの先駆けである
「DEP(Digital Studio Processing)」を使い倒す日々。
そして、今や業界標準となった「Avid Pro Tools」の導入も、私は最初期から動いていました。
当時はまだMacintosh PowerBook 3400cにフリー版のPro Toolsを入れて、撮影現場の音楽プレイバック用に持ち込んでいた時代です。(そういえば当時はdigidesign社でしたね)
印象深いのは、あきる野のハウススタジオで行われた某有名ロックアーティストさんのMV撮影。
まるまる2日間、Pro Toolsでずっと音楽を出し続けました。
その間も大御所コメディアンのMA案件が入っていたため、途中で別のスタッフに現場を引き継いでスタジオに走り、MAを終わらせたらまたあきる野の爆音現場にトンボ返りするような、文字通り命を削るスケジュールでした。
(ちなみに、現場のスピーカーで低音をデカい音で出しすぎて、そのハウススタジオを「出禁」にしたのは、今となっては最高にロックな思い出です)
さらに2007年には、某清涼飲料メーカーの『キモチスイッチ』という企画で、一挙に「100話」のMAを仕込むという過酷なミッションに直面しました。
膨大なタイプ数をこなすため、プラグインが使えるPro ToolsをDEPのバックアップ機としてフル稼働させ、同録の整音、SE、音楽の仕込みを不眠不休で組み立てていきました。
効率、短納期、タイトなスケジュール。職人としての腕を試される現場はエキサイティングでしたが、業界全体が「低コストとルーティン」に傾いていく中で、私は徐々に「目先の売上ではなく、もっと10年先の次世代の表現に命を燃やしたい」と、胸の奥で燻り始めていたのです。
第3章:2012〜2016年、早すぎた未来と「組織」との決別
その燻りが爆発したのが、2012年。iPhoneが普及し始めた頃です。 私は「現実の地図の上にAR(拡張現実)で情報が出るアプリが作りたい!」と思いつき、Xcodeの本を買ってきました。まだ『Pokemon GO』すらこの世に存在しない時代です。
プログラミングの知識なんてゼロ。それでもObjective-Cのサンプルコードを、意味もわからないまま1文字ずつキーボードで執念の手打ち(写経)をし、画面にARを表示させることには成功しました。
結果的にネット経由のデータ取得(API通信)の壁にぶち当たって挫折しましたが、「世界にない未来を先取りしたい」という狂気のような衝動は、もう誰にも止められなくなっていました。
そして2016年、映像ポストプロダクションの社員時代には、VRと360度動画、そして
「アンビソニックス(空間音響)」
という本物の未来に出会います。
当時、国内の誰も触っていなかったFacebookの最先端ツール 「FB360 SDK」 をシステム課の優秀な女の子に渡し、 「これで空間音響(.TBEフォーマット)を実装した360度動画プレーヤーを作ってくれ」 と直談判しました。 完成したプレーヤーをヘッドホンで聴き、音が自分の動きに合わせて全方位から回り込んできた時、私は震えるほど感動しました。
「これで世界が変わる!ゲームチェンジャーになれる!」 しかし、会社(組織)の反応は冷ややかなものでした。 「で、それで来期の売上はいくら増えるの?」
残酷ですが、組織が見ているのは「今期の利益」であり、私が見ていたのは「まだ誰も知らない次世代の体験」だったのです。 その温度差に幻滅し、私は長年勤めた会社を飛び出しました。
第4章:2026年、始まったばかりの「XYZ革命」
組織を離れてからも、私の脳内の「音の実験室」の火が消えることはありませんでした。
むしろ、最新の立体音響プラグインを武器に、私の飽くなき実験が再び始まりました。
今この瞬間も続いている泥臭くも最高にエキサイティングな研究のリアルを、このMSSLという場所で刻んでいます。
ここから、また実験を始めます。
2026年、私がこれまで歩んできた35年の歴史、そして積み重ねてきたすべての機材と実験は、すべて今の私の脳みそを形作るための足跡だったのだと。
はまだ始まったばかりです。
私が見据えている空間音響の未来は、ここからが本当のスタートライン。
これからどんな音が作れるのか、私自身が一番ワクワクしています。
55歳になった今でも、「なんで音はこう聞こえるんだろう?」という純粋な謎は、何一つ色褪せていません。
むしろ、まだ答えの出ていない実験が、山のように私を待っています。
あなたの耳は、まだ『後ろ』を知らない。
MASTERSOUND Spatial Lab(MSSL)主宰 トミー



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